思考のごみばこ

ゴミはゴミ箱に、思考はインターネットの海に

アメリカンスナイパーを観ました

今更ながら、アメリカンスナイパーを観に行ってきました。

ネタバレなしでレビューしようかなとも思ったのですが、

この映画はラストがいいので、ゴリゴリのネタバレレビューかまします!

まだ観ていない人はご注意を。

 

あらすじはざっくり書くと、

イラク戦争で伝説のスナイパーと謳われた狙撃手の人生、ですかね。

ほんとにざっくり書いたなw

クリス・カイルという実在のスナイパーの自伝が原作となっています。

詳しくは公式サイトへ↓


映画『アメリカン・スナイパー』オフィシャルサイト

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イラク戦争を題材にした映画を観るのはハート・ロッカーゼロ・ダーク・サーティに続いて三作目。

結論から言うと・・・一番面白いと思いました。

それは、ヒューマンドラマとして上質だったからかなと。

女性って戦争映画あまり好きじゃない人が多いんじゃないかと思いますが、

私は拒否感はないほう。

戦争って、究極の状態じゃないですか。

生と死、善と悪の境界が曖昧になるというか。

人類の長い歴史のなかでずっと繰り返されてきたものだし、

そこには「人間」というものがぎゅっと濃縮されているように感じます。

残虐なシーンが多いのは、戦争はそういうものだよっていうメッセージがあるからだと思うので、

気持ちがいいものではないけれど、その圧倒的な威力に心を奪われてしまう。

 

アメリカンスナイパーが反戦映画なのか、はたまたクリス・カイルの礼賛映画なのかというのが議論されてるようですが、

どっちでもないんじゃないかな。

観る側がとるスタンスで変わる気がしてます。

どのエピソードに、誰に感情移入するかですよね。

 

誤解を恐れずに書くと、私は戦争=極悪な人間たちが生み出したものという図式に疑問を抱くことがあります。

第二次世界大戦だって、「それが国のため」と信じて、必死だった人たちが犯したもの。

勝てば官軍負ければ賊軍、世界中で戦争が繰り返されてきて、

その時はお互い、大義名分があるわけです。

それはきっと、洗脳に近い願い、野望のような。

それを一概に「悪」でばっさりと論じるのは好きではないです。

 

私はアメリカンスナイパーは、一人の人間の話だという感想を抱きました。

「伝説」と称された狙撃の名手も、一人の人間であり、夫であり、父であるという。

英雄になんかならなくていい、ただ幸せに生きれればいい。

そういうメッセージを感じる一方で、狙撃手としてのクリス・カイルにはしびれますね。

「アメリカを、味方の兵士を守る」

そんな想いからたくさんの人を殺したクリス・カイルのその愚直さは、

滑稽にも見えるかもしれないけれど、アメリカの兵士たちの命を救ったのも事実。

仲間の仇討ちのために、2km近い距離から相手の狙撃手を射ったシーンはかっこよかったです。

 

愛国心から従軍する若者もいれば、崖っぷちの生活をしていて、そこから脱げだすために従軍する若者もいるからね。

私の知る米軍出身者には、若いうちに軍に入ってお金をつくり、大学に行った人が何人かいます。

命を危険にさらしても、その見返りは魅力的なんです。

アメリカでは、軍をワンステップと考える風潮は、なくはないんじゃないかなぁ。

退役軍人のホストペアレンツと暮らしましたが、二人とも現在は全然違う仕事をしてますよ。

しつけには厳しかったけれど、いたって普通の人たちです。

そんな人たちの命を守ったという視点からクリス・カイルを見ると、

やはり彼はアメリカン・ヒーローなんだと思う。

 

そのアメリカン・ヒーローは、救おうとした若者に命を奪われてしまう。

諸行無常ですよね。

だからこそ、この作品は考えさせるものがあります。

彼は「仲間を救う」ことに人生の意味を見出してきたのに。

そんなこと考えず、平凡な男として生きてたら死なずにすんだのに。

 

やはり戦争は、「奪う」ものなんだと思います。

いろいろなものを、いろいろな人から。

 

クリスが支援する傷痍軍人(退役軍人)で車いすの人が出てきたのです。

そしてクリス・カイルの実際の葬送の映像が映画の最後に挿入されるのですが、

そこで車いすの人が手を大きく上げて、星条旗を振るんです。

そのシーンがかなりきましたね。

 

実際に従軍して、反戦主義になる人もいると思うのだけど、

戦争で傷ついたからこそ、それを正当化しないとやりきれない・・・

そんな人もいるから、私たちは政治を、平和を語るとき、

二元論で考えてはいけないのではないか。

そう思います。